2017年09月11日

お店の中で

私には、知り合って3年くらいの彼氏がいる。
病院の帰りに連絡をして、友だちと別れた後に彼氏に逢った。

息子のことは電話で話してある。

看護師さんが持ってきた書類に息子が必要事項を記入したのだが
右手が痺れて上手く書けなかった。
トイレに行きたいと歩きだしたが、歩き方が不自然。

一見、どこも具合が悪そうには見えないのに
そんなところを見ていると、やっぱりなのかと思ってしまう。

病名を聞いて3日目。
初めは他人事のように聞いていたけれど
どんどん私事なのだと実感していく。

私が悲しんだら、息子も悲しむ。

そう思って病院では、なるべく普通を装っていた。
病院がある駅は、私が住んでいるところよりちょっと田舎で
あまり人がいなくて寂しい感じ。
それがまた私の気分を落ち込ませるんだろう。

無性に彼氏に逢いたくなった。

お腹が空いているだろうと思って入った駅近くのファミレス。
メニューを見ても食べたいと思えなかった。

私はそこで、初めて泣いた。

泣いたって仕方がないことくらい分かってる。
泣いたって息子の病気が治るわけじゃないことも。

彼は余計なことは何も言わず
私が好きな飲み物をドリンクバーから2種類持ってきた。

他の人から見たら、いい年こいた中年カップルが
別れ話でもして泣いてるように見えちゃうかな。

私は彼に「ごめん」と一言謝ると
「他人は事情なんか知らないんだから気にするな」
そう言って、黙って側にいてくれた。

それだけでも、その時の私は救われたんだ。



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2017年09月09日

キンモクセイが香る頃

今から10年くらい前のこと。
9月に入ったばかりの頃に、直腸がんステージ3bと診断された。
すぐに手術はせず、抗がん剤と放射線治療が始まった。

治療のための通院はほぼ毎日で、会社には行けなくなった。
私は仕方なく仕事を辞め、生活保護を受給した。
元旦那と別居して、一年くらいたった時のことだった。

家から自転車で10分くらいの病院。
病院の近くの道沿いにキンモクセイが咲いていた。

放射線治療の副作用で、日に日に辛くなっていく体。
病院など行きたくないと思いながら通った道。
不安で押し潰れそうな気持ちだったあの頃。

だから私は、キンモクセイの香りが嫌い。

再発もなく癌は完治しているけれど
あの香りを嗅ぐとあの時の気持ちが蘇る。

しばらく忘れていたキンモクセイの香り。
息子を見舞った病院の帰り道。
まだそんな季節ではないはずなのに。



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